スレート屋根の耐用年数は20年?メンテナンスで寿命を延ばす方法
日本では今でも非常にポピュラーなスレート屋根。
この「スレート」にも当然、寿命があります。この「寿命」について、よく理解しているかどうかで、今後あなたの家にかかるメンテナンス費用が大きく変わるので、しっかりと知っておきましょう!
- スレートの寿命は何年?
- 「寿命」って具体的にどんな状態?
- 寿命を延ばすメンテナンス方法
- 寿命を迎えたスレートのメンテナンス方法
Contents
スレート屋根の寿命は20~30年
スレート屋根とは、一般に「化粧スレート」と呼ばれる屋根材で、寿命はおおよそ20~30年とされています。中には、「コロニアル」や「カラーベスト」という名前に馴染みがあるという方もいると思いますが、どちらも「化粧スレート」の一種です。(コロニアルもカラーベストも、製品の「シリーズ名」です)
いや、20年?30年?どっちなの??と思った方もいらっしゃると思いますが、
- 立地環境(塩害の有無・気候・強風地域)
- メンテナンスの状況
によって寿命は変わります。たとえば、内陸部でこまめにメンテナンスをしているなら30年しっかり耐えるでしょうし、塩害地域でほったらかしなら20年も持たないかもしれません。まずは、あなたの家の立地環境やメンテナンス状況を工事を任せる業者には理解してもらうようにしましょう!
アスベストを含む・含まないでもスレート屋根の寿命は変わります。アスベストを含まないものの方が寿命は短く、中でも2000~2006年頃に販売されたスレートは10~15年ほどで耐用年数の限界を迎えます。あなたの家の建築年月日をよく確認するようにしましょう!
「寿命」って何?具体的な劣化症状
では、「寿命」とは具体的にはどのような状態を指すのでしょうか?これには、大きく分けて2つの「寿命」が存在します。
スレート自体の寿命
1つ目が、「スレート」そのものが寿命を迎えている状態です。
具体的には、以下のような場合です。
- ひび割れを防げないほど強度が落ちた
- 塗装が乗らないほど表面が傷んだ
- 反ってしまった
それぞれについて、解説します。
1.ひび割れを防げないほど強度が落ちた
【2023.3.3ドローン調査にて撮影】築20年で崩れ落ちたスレート(東京都町田市)
スレート屋根は、たった4.5mmほどの薄いセメント板です。セメントはふつうの水には強いのですが、「酸性雨」には溶ける性質があります。ブロック塀から白い筋が流れ出ているのを見たことはあるでしょうか?あれが、セメントが溶けることで出る症状です。ただし、一般のコンクリートのように厚みがあるなら問題はありません。一方、スレートはたったの4.5mmです。防水性が切れた状態が続いていくとセメントが溶け出し、空隙が多くなります。そのようにしてだんだんとスレートは脆くなっていってしまいます。
また、スレートに染み込んだ水は凍ると膨張を引き起こします。その膨張にスレートは耐え切れず、ひび割れが発生します。目に見えるひびだけじゃなく、内部で起こる目に見えないひびによっても、スレートはだんだんと強度を失っていきます。
このようにして、スレートそのものの強度が低下してしまった場合、塗装をしても元通りにはなりません。つまり、ひび割れが頻発するような状態になったときは、補修することはできても、ひび割れの再発を防ぐことができません。つまり「寿命」です。
2.塗装が乗らないほど表面が傷んだ
【2023.2.5ドローン調査にて撮影】築25年下地が傷んでしまったスレート(神奈川県藤沢市鵠沼)
これは残念ながら、塗ってしまっているケースを目にします。スレートに限らず、建材は傷むと表面がガサガサになっていきます。そのガサガサになった表面に塗装をしても、くっつきが悪い状態のまま塗ることになります。
この状態に塗装をすることも、綺麗な見た目に仕上げることも可能です。でも、くっつきが悪い下地に塗っているわけですから、当然長持ちはしません。せっかく塗り替えメンテナンスをしたのに、数年でまたメンテナンスが必要になる・・・ということも決して珍しいことではないんです。だから、下地の状態をよく確認して、適切な施工方法を選択するようにしましょう。
3.反ってしまった
【2020.11.22ドローン調査にて撮影】外側に向かって反ったスレート(神奈川県藤沢市)
最後は、スレートの寿命としては代表的な症状である「反り」です。
スレートは水を吸ったり乾いたりを繰り返していくと、徐々に外側に向かって反り上がる性質があります。紙や木も、濡れて乾いて・・・ということを繰り返すと変形しますが、それと同じです。
スレートが反ってしまうと口が開きます。この開いた口のすぐ2~3cm先には、実は屋根裏まで貫いてスレートを留めている釘が隠れています。横から雨が吹き込んで、釘まで到達すると雨漏りを引き起こします。
そして、反ったスレートは塗装をしても戻りません。つまり、反ったスレートはせっかく塗装をしても、相変わらず口は開いたまま、雨漏りリスクを抱えたままになります。そして、雨漏りしたらまたメンテナンスが必要になる・・・
もしも、スレート1枚分ほど反ってしまっているなら、屋根裏に水が入ってきていないかをよく確認した上で「カバー工法」や「葺き替え」も視野に入れておく必要があるでしょう。
防水シートの寿命
2つ目が、スレートの下の「防水シート=ルーフィングシート」が寿命を迎えてしまった場合です。防水シートの寿命が屋根の寿命とも言われるほど重要な部材ですが、ほとんど説明すらされずに施工が進む現状があります。
屋根は、①屋根材②防水シートの二重構造になっていて、スレートなどの屋根材の下には「防水シート(ルーフィングシート)」が隠れています。
【弊社施工中】防水シート取付
この防水シートが、スレートの隙間から入り込んでくる雨水をシャットアウトし、雨漏りを防いでいます。そのため、防水シートが寿命を迎えてボロボロになると雨漏りを引き起こします。
新築時に、どの防水シート(ルーフィングシート)を選んでいるかによって、寿命は大きく異なります。
●アスファルトルーフィング
寿命は約10~15年。新築において最も普及している製品。
●改質アスファルトルーフィング(ゴムアスルーフィング)
寿命は約20~30年。アスファルトルーフィングよりも耐久性に優れ、「ゴムアス」などと呼ばれることもある。
●高分子ルーフィング
寿命は約15~20年。塩化ビニルなどを使っており、比較的安価。
●粘着層ルーフィング
寿命は約20年。カバー工法などでよく使われる。屋根に直接貼るための「粘着層」がある。
●特殊ルーフィング
寿命は20~50年。遮熱性を持つもの、透湿性に優れたもの、耐久性に特化したもの、雨漏り防止に特化したものなど、様々な種類がある。中には、耐用年数が50年のものや、雨漏り保証のつくものなどが存在する。
メンテナンスの目的は?
スレート屋根をメンテナンスする目的は以下のとおりです。
- 美観保持
- 延命(防水性の維持と劣化防止)
1つは、見た目を美しく保つこと。大切な家ですから、いつまでもキレイに保ちたいですよね。でも、いくらキレイでも雨漏りしたら一大事です。そのため、大切なのが2つ目。「防水性の維持と劣化防止」、つまりスレートの延命です。
スレートは主に「水」によって傷む建材です。そのため、塗装によって防水性を維持することで傷みを軽減することが可能です。これが、塗装をする最も大切な目的です。
30年しっかり屋根が持つのか、20年も経たずにダメになってしまうのか、この差はとても大きいものです。こまめに手をかけて、大切なお家を守りましょう。
具体的なメンテナンス方法と費用相場
最後に、具体的なメンテナンスの方法についてまとめていきます。「寿命を迎える前(延命)」のメンテナンスと「寿命を迎えた後(問題の根治)」のメンテナンスでは内容がまったく異なります。
寿命を迎える前のスレート屋根=延命
寿命を迎える前のスレート屋根は「塗装」によって延命します。
●屋根塗装費:15万~40万程度
※屋根の面積・塗料や職人のランクによって変わります。
さきほども書いたように、スレートの天敵は「水」です。水により脆くなり、染み込んだ水が凍ると割れます。そして、湿ったり乾いたりすると今度は反ります。
だから、表面を塗装して防水性を維持していく必要があるんですね。塗装が劣化して防水性が切れると、急激に傷みます。だから、塗装の防水性が切れ始めた段階で再び塗装することで、スレートの傷みが少ない状態をキープできるんです。
ただし、あくまで位置づけは「延命」です。どれだけ頑張っても40年、50年と持たせられるものではありません。塗装によって延命して、10年後に葺き替えるなら、今葺き替えてしまった方が結果的に安い・・・というケースも少なくないので、次回のメンテナンスにかかる費用まで含めて、広い視野でメンテナンス方法を選ぶようにしましょう!
寿命を迎えたスレート屋根=問題の根治
残念ながら寿命を迎えてしまったスレート屋根は塗装ができません。・・・正確には、塗装できますが、意味がありません。理由は以下のとおりです。
- 塗装しても、脆くなったものは戻らない
- 塗装しても、反ったスレートは反ったまま
- 雨漏りは防水シートを変えなければ直らない
つまり、寿命のスレートを塗装しても、ひび割れリスク・雨漏りリスクは何も変わらず悪化の一途を辿ります。そのため、寿命を迎えたら「カバー工法(重ね葺き)」または「葺き替え」によるメンテナンスを選択します。
- カバー工法・・・今のスレート屋根の上に新しい屋根を重ねる工法
- 葺き替え・・・古いスレートを撤去し、新しい屋根を作り直す工法
●カバー工法:90~150万円、葺き替え140~200万円
※屋根面積・材料や職人ランクによって異なります。
葺き替え工事の方が、屋根を剝がす費用や処分費がかさむため高額な工事になります。そのため、できればカバー工法の方が費用を抑えることが可能です。ただし、カバー工法はあくまで「今の屋根」を土台にする工事ですから、今の屋根の下地が傷んでしまったら選択できなくなります。
下地が傷んでいないかどうかは屋根裏から見無ければ絶対に分からないので、必ず調査の際には「屋根裏」を見てもらうようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
一言に「スレート屋根のメンテナンス」といっても、寿命を迎えているのか、そうでないのかによってしっかりと方法を判断しなければならないということがお分かりになりましたか?だからこそ、「寿命」の目安だけでなく、症状やメンテナンス方法をよく知っておくことが大切です。
スレート屋根は、ありふれている反面、施工トラブルの多い屋根材です。寿命を迎えているかどうかなんか気にもせず、なんでもかんでも塗装してしまっているようなケースも少なくありません。大切な家の、最も大切な「屋根」のメンテナンスですから、しっかりと知識のある業者を探しましょう。
外装劣化診断士、耐震技術認定者の資格を持つ建物診断のプロです。年間約300棟の建物調査を担当。ドローンによる屋根診断、外壁の劣化診断だけでなく、全棟屋根裏まで入って調査。
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